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がん治療の問題点

日本のがん治療は、標準治療と緩和医療とのあいだが、すっぽり抜けている。
がん治療の現場では、「がんの最後までの治療」をめぐって、患者さんと医師に大きなギャップが存在している。 東大病院放射線科のアンケート調査の結果をみると、末期がんと言われた人でも80%もの人が、最後まで治療を受けたいと思っているのに対して、最後まで治療を提供したいと思っている医師は、20%にすぎない。

末期がんの患者さんと医師とのがん治療に対する意識のギャップは、じつに大きいのである。
最後までなんらかの治療を受けたいと思っている患者さん…………約80%
最後までなんらかの治療を受けることを諦めている患者さん………約20%
最後までなんらかの治療を提供したいと思っている医師……………約20%
最後までなんらかの治療を提供することを諦めている医師…………約80%
日本のがん治療は、標準治療(手術・科学療法・放射線治療)とがんの終末期ケアを目的とする緩和医療の2つに大きく分かれていると言われている。

緩和医療は、がんそのものに対する治療行為でなく、がんに伴う様々な苦痛の除去を目的とした医療である。がんの標準治療を行っていて、これ以上の標準医療は患者さんの体力を消耗させるだけだいう医師の冷静な判断により、「もう治療はありません。あとは、緩和医療です」と、話さざるをえないケースがある。
その時点で、患者さんがもう食事もできず、起き上がることもできないのならば、患者さんとしてもある種の納得はあるかもしれない。

だが、通院できるほど「元気」な患者さんも少なくないく、その患者さんに対して、がんを治すための治療をしないで、緩和ケアやホスピスなど、いわゆる「死に向かうための準備」をさせるわけだから、「何か、ほかにできる(がんを治す)治療はないのか」「本当に、もう諦めなくてはいけないのか」と思うのは無理もないことである。

がん難民

「何か、できる治療はないのか」という気持ちを抑えきれない患者さんは、「がんを治す」標準治療以外の治療を求めてさまようことになり、これを「がん難民」と呼んでいるのである。
この「がん難民」発生のメカニズムを見ていて気がつくのは、標準治療と緩和医療とのあいだが、すっぽり抜けていることである。標準治療から緩和医療へは一足飛びあり、連続性がなく、つながっていない。標準治療で手に負えなくなると、突如がんそのものの治療は放棄され、あとは緩和ケアとなるのである。

「もはや治療はない」と宣言された患者さんが、標準治療を提供した大学病院、がん専門病院などの基幹病院で、どんなにセカンドオピニオンを求めても、解決策は出てこない。これは、論理的には当然のことなのだが、患者さんとしては非常に受け入れにくい現実である。

他方、一般病院の医師の多くは、最初に担当した医師が、再発後も担当することが多いので、患者さんを看取ることも多い。医師でありながら、最後の段階では治すための医療を提供できずに、患者さんを看取らざるを得ないのである。日本の医療体制は保険診療が標準治療のベースになるため、新しい治療を取り入れる自由度がなく、尚更、がんの標準治療と緩和医療の間がすっぽり抜けることになる。



末期がんの患者さんと医師とのがん治療に対する意識のギャップは、じつに大きいがんの死亡率は年々増加していて、がんの標準治療と緩和医療のあいだはすっぽり抜けたままなのだから、「がん難民」は増え続けることになる。

現在、1年間に60万人から70万人が、がんであると診断され、34万人近くが死亡している。これは、1日に約1000人が、がんにより死亡しているということである。
がんの標準治療については、治療に成功しても、2人に1人は再発している。これは完治していないということであり、がん再発患者さんは、再発前(最初のがん罹患)よりも死亡率は高くなる。